ニシン漬けの記憶
以前のブログでニシン漬けのレシピを紹介したことがありますが、改めてニシン漬けを考えてみたいと思います。にしん漬けとは、かつて北海道ではニシンが大量に捕れ、それにまつわる産業が隆盛を極めた時代がありました。ニシンの漁獲量は明治時代には100万トン近くあったそうです。しかし昭和30年代頃から漁獲量は激減し、ほとんどとれなくなった時期もありました。最近は少しずつ漁獲量も増え、産卵のため沿岸に押し寄せ、海が白くなる「群来」も見られるようになりました。このニシンを使った漬物が「にしん漬け」と言われるものです。主に北海道、東北地方で作られているようです。春に獲れたニシンを干物の身欠きにしんにして保存し、晩秋から初冬にかけてダイコン、キャベツ、ニンジンなどの野菜とともに麴を使い発酵させ、冬場の保存食としました。スーパーなどでも販売されていますが、オリジナルのにしん漬けを作っている家庭も多いと思います。このニシン漬けはニシンのうま味を野菜に移しその味を楽しむものです。野菜だけの漬物では味わえないニシン漬け独特のうま味をもっています。野菜だけの漬物とニシン漬けを並べて食べ比べるとその差は歴然で深みのある味わいを感じます。しかし市販のにしん漬けは素材そのものが小ぶりで何か物足りなさを感じます。
最初にニシン漬けを見たのは幼い頃、近所の親戚のおばさんが持ってきてくれる大きな器いっぱいのにしん漬けでした。それはダイコンやキャベツが大きく切り分けられた半分凍れているものでした。その時の私はそれを美味しいとは感じなかったように思います。しかし頭の片隅にその記憶が残り、大人になって食べるニシン漬けに物足りなさを感じていました。そしていつしか自分でニシン漬けを作っていました。素材の種類も多くなくレシピどおりに作るのはそれほど難しくありません。肝心なのは麹を事前に発酵させて混ぜ、素材に麹がいきわたるように丁寧に仕込むことです。あとは1週間くらい熟成させれば完成です。大ぶりのダイコンやキャベツがニシンのうま味を吸収し、麹によって熟成された深みのある発酵食品になり、かつ冬季の野菜不足の貴重な栄養源となります。この北国ならではの郷土料理を大切に継承したいものです。
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