クサハツの発生を考える
先日、小樽なえぼ公園を散策したことを報告しましたが、その時に記事にしなかったことがあります。それはクサハツ(菌根菌)が10個前後の群生を形成し、数百メートル四方でその群生がいくつも確認できました。キノコ(子実体)が発生する条件は、その種により(腐生菌、菌根菌、寄生菌)さまざま考えられますが、一般的には菌根菌は土壌含水率、地温の条件により子実体を形成するものと考えられます。つまり早春に発生する山野草のカタクリや行者ニンニクなどと同じように環境の変化(日照時間、地温、湿度等)を察知し、種の存続に適したタイミングで発芽や子実体の発生を促すメカニズムを駆使していると思われます。



クサハツは菌根菌の仲間で、植物の宿主が菌根を形成し、菌根菌は水や無機栄養分(窒素、リンなど)を植物に供給し、植物は光合成産物に由来する、糖や脂質を菌根菌に供給するという相利共生の関係を結んでいます。そしてこのクサハツは針・広混交林の地上に発生するようです。なえぼ公園の発生環境を見ると、ミズナラとの相利共生が成立していると思われます。そしてもうひとつ子実体の発生条件で考えられるのが、キノコの菌糸体の状態です。菌糸体の寿命は、1年から数年あるいは数百年から数千年存在する種もあるようですが、確かなことはよくわからないというのが現状ではないでしょうか。今回のクサハツの子実体の同時発生は、前年の胞子が二核菌糸から分裂を繰り返し菌糸体になり、一斉に子実体を発生させたとは考えにくいような気がします。数年間宿主と共生関係を結び、条件が整って一斉に発生したとの考えが妥当と考えます。つまり土壌含水率、地温、宿主との共生関係が子実体の発生条件に合致した時、大量発生が成立するのではないでしょうか。ではその宿主であるミズナラに顕著な恩恵があるのでしょうか、ドングリが大量発生するとか?これもまた面白い課題です。
ヤグラタケの発生を考える
今回もうひとつ考察したいのは、クサハツが老菌になり、さらに黒く腐食の進んだかさ上などに発生していたヤグラタケの生態です。ヤグラタケは、クロハツやクロハツモドキなどのベニタケ科の成熟しきった黒く変色した老菌上に発生すると図鑑にはあります。クサハツもベニタケ科なのでヤグラタケの発生条件に合致します。ここで疑問に思うのは、ヤグラタケがどこからやってくるのかという点です。なぜベニタケ科のキノコの老菌上にピンポイントで発生するのでしょう。
今回はAIに聞いてみました。
ヤグラタケは、通常の胞子のほかに、耐久性に優れた厚壁胞子をかさの表面に大量に形成します。この厚壁胞子は、風に乗って遠くまで飛ぶようにはできておらず、宿主の生息地周辺の土壌にばらまかれます。そして土壌中で菌糸を形成し待機します。宿主となるべきベニタケ科のキノコが地上に子実体を形成しようとするのを何らかの方法で察知し、まだ土中にある宿主の幼菌、または子実体の柄やかさの組織に菌糸を伸ばし、侵入を開始し、宿主の子実体が地上に姿を現し成長するにつれて、宿主の組織内に蔓延していくようです。やがて宿主の子実体が老菌となり、腐敗し始めるとヤグラタケは宿主のかさの表面などから菌糸を広げ、そこからヤグラタケ自身の子実体を形成し始めるとありました。専門の研究機関などの論文を閲覧できればもっと詳しい仕組みを解説しているのでしょうが、見つけられなかったので、AIに聞いてみたのですが、何となく腑に落ちた気がしました。


キノコには解明されていない生態がまだまだ多くあるのでしょう。それは身近で、平凡な一市民が山を散策して気づき、観察、考証して何らかの結論を導き出すことのできる(正否は別として)ゲームのようなものかもしれません。これがキノコ観察をやめられない一つの理由です。
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