【巨匠】黒澤明の残した「仕事」を考える|小樽 山歩き キノコなど

黒澤明
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黒澤明の作品について

黒澤明の作品は好きで、今ではDVDで何度も見ています。最初に見たのは、高校生の頃で札幌駅地下にあった映画館や須貝ビルにあった映画館などでのリバイバル上映だったと思います。どの作品だったかは全くわかりませんが、すごいインパクトを与えられたのは確かです。それ以来上映の情報がある度、何度も足を運んだ記憶があります。数年前まで、ゴジラやガメラを見て喜んでいたガキンチョがそのリアリズムを目の当たりにし、それはそれはびっくりしたでしょう。
黒澤作品の真骨頂は観客をその世界観に引き込むエンターテインメント作品でしょう。そのもっとも代表的な作品が、七人の侍でしょう。農民と侍が力を合わせ野武士と戦う大作です。そのリアリズム、アクション、ヒューマニズム全てが凝縮された日本映画史上最高傑作のひとつでしょう。この映画で私が心に残るセリフは、野武士との雌雄を決し終えた場面で、侍の勘兵衛(志村喬)が七郎次(加藤大介)に「また生き残ったな」と言います。これは戦国の世を生きる侍の死ぬより辛い、生き抜くことの過酷さを吐露させています。
黒澤作品の初期に「野良犬」という作品があります。物語は、若い刑事(三船敏郎)が電車の中で拳銃をすられてしまします。この場面で戦後の更地同然の街を電車が走っていたり、すられた刑事が電車を降り街角を走り回る場面など、街並みがなく戦後間もない東京の様子がよくわかる作品です。そして犯人を捜すため街を歩く場面が丹念に描かれているのですが、戦後日本人のみなぎるエネルギーや復興への強い意志、鼓動が伝わってきます。それは勘兵衛がもらした「また生き残ったな」というセリフとオーバーラップしてしまいます。日本人の生への貪欲さ、底力を感じさせるシーンでした。
黒澤作品の「用心棒」「椿三十郎」は、彼のエンターテインメント作品の中でも特筆すべき面白さがあります。”痛快娯楽時代劇”まさにこの言葉がぴったりです。黒澤作品は、脚本、映像、カメラワーク、テンポ、俳優、時代考証など緻密に考え抜かれたものがしっかり背景にあり、その上で娯楽を追求しています。


現代サスペンスの「天国と地獄」も好きな作品です。誘拐犯(山崎努)と被害者の権藤(三船敏郎)、警察との息詰まるやりとりが展開されます。この作品も細部にわたって緻密に計算されていますが、私の好きなアクション作品ではない、黒澤作品のもう一つの側面を垣間見れます。たとえば犯人が麻薬を手に入れるため大衆酒場のような場所で落ち合うのですが、そのシーンが当時の時代背景をよく映し出しており、庶民の熱気と混沌を感じさせます。そしてそれを持って麻薬中毒者が集まる場所へ行き、その効き目を確かめるため、純度の高い麻薬を注射して女を殺します。この中毒者の集まる場面の臨場感はリアルそのもので、とても興味深いシーンです。
最後に「羅生門」という作品は、ヴェネチア国際映画祭グランプリに輝いた名作で人間のエゴイズムをこれでもかというくらいに追求した心理劇とも言うべき作品ですが、その映像美は黒澤作品で一番だと思います。この作品は、何も考えずただ映像を追うだけでも価値のある作品だと思います。

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